博士号(ドクター)取得後に新卒で企業に就職するメリット・デメリット

2019年6月29日

こんにちは。とってぃです。

今回は、大学院の修士課程(マスターコース)に通っている理系の学生さんが進路を決める際に参考にしていただけるように、博士号(ドクター)を取得してから企業に就職した際のメリットとデメリットをご紹介したいと思います。

私自身が、博士課程卒業後に新卒で企業に就職しているので、実際に感じたことや経験したことをベースにご紹介します。ドクターへの進学を考えている方は参考にしてみてください。

尚、ご紹介する内容は、あくまで私の場合であり、状況は会社によって異なるので、1つの例として参考にしてください。

なぜ博士課程に進学したのか

一言で言えば就職できなかったから

私は元々、修士で卒業して企業に就職したいと考えていたので、修士課程のときには就活をしていました。

しかし、自分自身の問題やリーマン・ショックという外部環境の影響により、内定をもらえず、ある意味しょうがなく博士課程に進学したというのが本音です。

就職浪人をして次の年に再挑戦するという選択肢も合ったのですが、リーマン・ショックの影響で景気がすぐに回復する見込みが無く、状況はそれほど改善しないと思われたので、博士課程に進学して時間稼ぎをしようと考えました。

研究が軌道に乗ってきてドクターの学位を取れると思ったから

就活が上手く行かず、苦しい中でも、研究の方は順調に進めることができ、このままいけばドクターの学位も3年でスムーズに取得できるだろうと思えたことも進学を決めた理由です。

就職できなかったが後悔はしていない

就活で内定を得られず、その当時はかなり辛い思いをして博士課程への進学を決めましたが、最終的には後悔はしていません。

その理由は、ドクターで企業に就職する際に、これからご紹介するようなメリットを享受することができたからです。

ドクターで新卒入社するメリット

研究を担当する部署に配属される可能性が高い

ドクターで企業に就職した際に得られる一番のメリットは、研究部署に配属される可能性が高いという点です。

ドクターを持っていれば、研究を自分で進めていく能力があるとみられますので、自分が研究部署を望めば、希望が通る可能性が高くなります。

逆の言い方をしてしまうと、ドクターの人間を研究部署以外には配属させにくいと言えます。

会社からすれば、ドクターまで進学した人間を、事務作業的な仕事が多い開発部署や工場の工程管理の仕事をする部署に配属させるメリットがないからです。

理系の学生は、大部分が修士で卒業して就職するため、修士卒の人が研究部署を希望しても、希望通りに行かず、開発部署や工場に配属される可能性があります。

しかし、現在の日本ではドクターで就職する人は少ないので、研究部署を希望する場合には、相対的に自分の希望が通りやすいという状況になっています。

私もこのような状況の中で、研究職につくことができ、毎日自分の好きなように働くことができているので、就職に失敗したときにはとても苦しかったですが、現在では博士課程に進学したことを後悔はしていません。

同期より早く出世できる可能性が高い

その他のメリットとしては、同期よりも出世が早くなるという点です。

同期の大部分は修士卒であり、大学にストレートで入学していたら年齢が3つ違うので当然と思われるかもしれません。しかし、人数が多い修士卒の同期の中での出世競争に巻き込まれるという状況にはならないことから、余計なことに気を使わずに仕事に専念できるというメリットがあります。

自分と同世代の修士卒の先輩と比べて出世が少し遅れたとしても、それは勤続年数による差が元々あるので、あえて意識する必要はありません。

先輩と年が近くて話がしやすい

自分より2,3年先に入社した修士卒の先輩は、実質的に自分と年齢が同じか年下になるので、若手の先輩であれば、入社直後から比較的気軽に話ができるというメリットがあります。

場合によっては、先輩が自分に対して敬語で話しかけてくるというような状況もあり、少しやりづらさを感じることもありますが、会社に入って数年経てば、年齢など関係なくなってくるので気にする必要はありません。

むしろ、先輩と年が近いという利点を生かして、積極的にコミュニケーションを取り、早く会社に慣れてしまうのが良いと思います。

名刺に博士という肩書きを入れられる

ドクターの学位を取っていると名刺に博士という肩書きを入れることができます。

日本ではドクターの人数が少ないので、名刺に博士と書かれていると、周りの人から羨ましがられます。

また、取引先で名刺を出した際には第一印象としてインパクトを残せます。

その後の対応については、もちろんその人の人間性や能力次第ですが、一目置かれる存在になりやすいことは確かです。

その他、今まで周りを見ていてそれほど感じたことはありませんが、海外の研究者と話をする際には、ドクターを持っていないと対等に議論してもらえないという話も聞いたことがありますので、持っているに越したことはないと思います。

ドクターで新卒入社するデメリット

これまで、ドクターで就職する際のメリットを書いてきましたが、実際にはデメリットもあります。

短期間で成果を出していかないと同世代の人との差を埋められない

自分と同じ年齢の人と比べた場合、会社に対する貢献という意味では、修士卒の人に対して3年分の遅れがあります。

そのため、その差を埋めるには、博士課程で学んできたスキルや能力を生かして、短期間で成果を出していく必要があります。

修士卒の人が少しずつ会社に慣れて仕事を覚えていくのに合わせるのではなく、即戦力として会社に貢献していく必要があります。

また、定年まで働くことを考えれば、博士課程の3年というのは短い期間かもしれませんが、入社時点の年齢が修士卒に比べて3歳高くなっている分、定年までに働ける期間は短くなります。

ドクターとしての能力を発揮し、昇進・昇格していけば3年分の収入は取り返せると思いますが、そうでない場合は、時間的に損をすることになるので気を付けなくてはいけません。

入社時点での貯金が少ない

博士課程の学生は、研究費からの給与や学振による給与が貰えることもありますが、授業料は払う必要があるので、出費は大きくなります。

そのため、同世代の修士卒で働いている人に比べると、給与をもらっていたとしても貯金に回すことは難しいと思います。

もちろん、研究費からの給与などがもらえない場合もありますし、奨学金を借りているような場合は、貯金をすることは一層難しくなります。

そのため、入社直後は、大学で同級生だった修士卒の友人がいい車に乗っていたり贅沢な生活をしたりしているのを見て羨ましく思うことがあるかもしれません。

ただ、この点に関しては、あまり気にならない人もいると思いますので、些細なことかもしれません。

ドクターだから賢いと思われる

日本ではドクターで就職する人が少ないこともあり、ドクターだから賢いという目で見られがちです。

そのため、入社直後からプレッシャーを感じる場合が想定されます。

そんなときは、期待の表れだと考え、ドクターとしての実力を見せつけてやろうという気持ちでプレッシャーを跳ねのけていくようにしましょう。

また、ドクターは理論ばかりの頭でっかちだと思われてしまう可能性があるので、初めのうちは体を張って泥臭く行動することも大切です。

なんでこんなことをしなきゃいけないんだと思わずに、まずは必死に仕事に取り組んでいきましょう。

まとめ

今回は、大学院の修士課程に通っている学生さんが進路を決めるときの参考になればと思い、ドクターで企業に新卒入社する場合のメリットとデメリットをご紹介しました。

私自身は、博士課程に望んで進学したという訳ではなかったのですが、結果的には進学して良かったと感じています。

これから進路を決めていく学生さんも色々と悩むことになると思いますが、一度しかない人生なので、よく考えて悔いのない人生を歩んでいってください。