研究職は出世が遅いのか?出世しにくいのか?
就職活動をするときには、どの会社に就職するかを考えると同時に、どの職種を希望するかを考える必要があります。
そのとき、職種による仕事内容の違いを把握することは大切ですが、職種によって待遇や評価がどう変わってくるのかという点についてもある程度理解しておくことが重要です。
職種による待遇や評価の違いを知っておくと、入社前と入社後のギャップを減らすことができます。
理系の学生、特に博士課程の学生は、大学で長い間研究をしてきたので、企業でも研究職として働くことを希望する人が多いと思います。
では、研究職と他の職種では、仕事内容以外でどのような違いが出てくるのでしょうか。
今回はまず、研究職として働く場合の出世という点についてご紹介したいと思います。
結論を先に言うと、研究職は商品を開発する開発職に比べると、出世は遅くなる傾向があります。
もちろん、これは一般的な場合ですので、出世のスピードは自分の努力次第で変えていくことができます。
それでは、なぜ研究職は出世が遅くなるのか、どうすれば早く出世できるのかを順番にご説明していきたいと思います。
そもそもなぜ出世する必要があるのか
最近の若い人は出世に対する意欲がないという調査結果を新聞やニュースでよく目にします。
しかし、私は、自分のやりたい仕事をするために出世をした方がメリットを得られて良いと感じています。
では、出世をすることによるメリットとはどのようなものがあるのでしょうか。
出世することで給与が増える
出世をすることにより得られるメリットとして一番に思いつくのは、給与が増えるということだと思います。
日本の大企業に勤めていれば、大抵の場合、毎年の定期昇給やベースアップで給与は増えていきます。
しかし、世界の景気や企業の業績が悪かった場合は、増えたとしてもわずかな金額です。
一方、出世をして役職が上がれば、それなりに給与が増えていきますので、景気や業績をそれほど気にする必要がなくなります。
また、金銭的に余裕があれば、生活のことを心配する必要がなくなり、研究に専念する環境を作りやすくなるというメリットがあります。
自分の意思でやりたいことができる裁量が増える
出世をして役職が上がると責任が増えるので、出世を嫌がる人もいます。
しかし、役職が上がることで責任が増えると共に、裁量も増えるので自分の意思でやりたいことがしやすくなるという大きなメリットがあります。
自分で判断して処理できるようになるので、いちいち上司の許可を得る必要がなくなり、スムーズに研究を進めていけるようになります。
例えば、上司がめんどくさい人の場合、実験の許可をもらうときに理由を事細かに説明しなくてはいけなかったり、自分の意見やアイデアを聞いてもらえなかったりしてストレスを感じる場合がでてきます。
しかし、自分の裁量を使って上司の許可を得ずに仕事を進めることができれば、ストレスを感じることが減り、より自由な発想で研究に取り組めるはずです。
周りに頼みやすくなる
研究を進めていくには自分の部署だけでなく、他の部署の協力も必要です。
その際、役職が付いていると頼みやすく、協力も得やすくなるというメリットがあります。
もちろん、協力をお願いするときは、きちんと説明をしてお互いに納得してから進めていく必要がありますが、普段関わりが少ない人に対して、役職が付いていれば、しっかり協力しないといけないといった感情を持つ場合が多いのではないかと思います。
それでは、続いてなぜ研究職は出世が遅いのかということについてご説明していきたいと思います。
なぜ研究職は出世が遅いのか
商品から遠く成果が見えにくいから
メーカーには、大きく分けて研究、開発、製造の仕事があります。
企業における研究は、大学のようなアカデミックなものから製品に近いものまで幅広いですが、ざっくり言えば将来の製品・商品に使うための基礎技術を作っているという位置付けです。
開発というのは、実際の商品を設計する仕事であり、数年から数ヶ月先のために仕事をしています。
製造は、工場での品質管理や工程管理など、実際に生産している製品を扱っています。
この中で、会社の業績に一番影響するのは、商品を設計する開発職です。
開発職が設計した商品の評判が良ければ、売上が増えていき、利益を上げることができます。
会社としては、会社の売上や会社の成長に貢献した人を評価する場合が多いので、開発職というのは出世しやすい環境にあると言えます。
仕事の成果が商品として目に見える形になるので、評価されやすいという理由もあります。
これに対し、研究職というのは成果が見えにくく、仕事内容が評価されにくいので、開発職と比べると相対的に出世が遅くなる傾向があります。
研究テーマによっては、なかなか結果が出ない難易度の高いものであったり、結果が出るのに時間のかかる研究であったりするので、余計に成果として評価されにくい状況になる場合も出てきます。
スペシャリストの地位が低いから
日本の企業は、幅広く仕事ができて会社全体のことを見ることができるゼネラリストを好みます。
反対に特定の分野だけに精通したスペシャリストというのは地位が低くなりがちです。
研究職というのは、まさしくこのスペシャリストに該当しますので、会社としては積極的に上の役職に上げようとしない傾向があります。
研究の重要性を理解している経営者がいて、スペシャリストのためのポストがあるような会社であれば、研究職でも早く出世することができると思いますが、現在の日本企業ではそのような会社は少ないのではないかと思います。
どうすれば早く出世できるのか
では、どうすれば研究職でも早く出世できるようになるのでしょうか。
すぐに商品になる研究をして成果を出す
1つ目は、研究の成果を見えやすくするために、商品に直結する研究をすることです。
研究職の出世が遅い理由は、仕事内容が商品から遠く、会社の利益に貢献しにくいからです。
逆に言えば、研究していることが商品につながり、その商品が多くの売り上げや利益を生めば、成果として上からも見えやすくなり、会社としてあなたを出世させざるを得ない状況になるでしょう。
自分からアピールする
しかし、商品とは離れた研究テーマを会社から与えられている場合や、アカデミック寄りの基礎研究をしている人は、どうしても商品とつなげることが難しくなります。
そんな場合は、研究の成果を自らアピールしていく必要があります。
自分の研究成果は、〇〇に役立つ、将来のこんな製品に活用できるといったことを会社の上の人間に上手く伝えなくてはいけません。
私自身もそうなのですが、良い研究をしていれば、周りは評価してくれるだろうと考えていてはいけません。
大学や研究機関で働いているような人と違い、会社の上の人たちは学術的な研究に興味を持っている人たちばかりではなく、自分の仕事に追われている人たちばかりです。
そのため、自分から積極的に成果を伝えるようにしていかないと、自分の研究内容を認識してくれません。
自分の成果を理解してもらうことができれば、周りの人より早く出世することができるはずです。
良い特許を出せば成果になり出世できる?
企業で研究をしていると論文を出すより、特許を出すという機会の方が多くなります。
では、研究の成果を特許にすることで成果として認められ出世しやすくなるのでしょうか。
これに対しては、なかなか難しいと思います。
というのは、新しい化合物の合成方法や新しい材料の製造方法などは企業秘密にしておくことが多いので、会社にとって良い研究成果を出したとしても、そもそも特許にしないということがあるからです。
特許として公開されれば他社はその技術を真似できなくなりますが、製造方法や評価方法といった技術は、たとえ真似されたとしても、外からでは判断できないので、あえて技術を公開するようなことをしない場合が多いからです。
また、特許についても、商品に近い仕事をしている開発職の方が書きやすく、出願件数が多くなりやすいので、場合によっては開発職の方が特許報酬をたくさんもらえます。
この点においても、研究職は特許に対するメリットは少なくなる傾向があります。
まとめ
今回は、研究職の出世という点についてご紹介しました。
冒頭にも書いたように、最近では出世を望まない人も増えてきていますが、自分のやりたいことをやるためには早く出世することも必要になると私自身感じています。
また、現在就職活動をしている人は、企業に就職する前に会社における出世の仕組みを知っておけば、自分の価値観と照らし合わせながら、どんな職種を希望すればよいか考えやすくなるのではないでしょうか。
研究職を希望している人は、今回の内容をご参考にして、ご自身の将来を考えてみてください。
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